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医療法人の資金調達

はじめに
医療機関においても営利法人(会社など)と同様に事業を行う場合には運営資金が必要となります。具体的には、職員などの支払う給与・製薬会社などに対する支払い・医療機器をリースしていればリース料金(短期資金)などが発生します。医療機関の収入としては、診療報酬債権が中心です。ただ、この診療報酬債権が請求してから、実際に医療機関などに支払われるまでには、相当のタイムラグ(時間差)が生じます。そこで、医療機関としては、毎月の必要な資金について・今後の発展のために必要となる資金(長期資金)について何らかの方法により調達する必要が生じます。

ただし、通常の営利法人(株式会社)とは異なり株式や社債を発行することで不特定多数人から広く資金を調達することは出来ません。この点が医療法人の活動資金を調達する上で困難なポイントになっています。また、収益事業を行うことができないことから、診療報酬債権以外に収入の柱を劇的に増やすことはできません。

一般的に、収益を挙げるにはベッドを増やす事が考えられます。ベッドが増えると診療報酬も増えることから医療機関の収入も増えます。ただし、増床にも都道府県知事の認可が必要であり簡単に増やす事は不可能と言えます。医療法において、営利事業を行うことは禁止されていることから自己資金に限界があります。そこで、外部資金(資金調達)を集めることが必要となります。

▼ 医療法人(病院・診療所)における資金調達の必要性  ▼ 直接金融と間接金融について
▼ 具体的な資金調達の手法 ▼ 結びにかえて

医療法人(病院・診療所)における資金調達の必要性

病院・診療所設立・運営においては、一定の資産・資金を有する事が必須となります。以前は、資金割合などの条件が付されていましたが、現在では具体的な割合については撤廃されています。また医機器などの必要最低限の設備投資も必要であり、医療機関には多額の資金が必要です。医療法人においては、一定の資金・資産を有することが認可の要件でもあります。医療法の規定により収益事業は行えません(例外あり)。

上記のように、医療法人・病院・診療所においては設立に際して・運営する上で多額の資金が必要となります。ただ、必要な資金調達を行う場合にも用いることが可能な手法が限られます。この点が難しいポイントと言えます。

日々の運転資金だけではありません。中長期的な視野にたって必要な資金もあります。病院の建替え・高額医療機器の購入・将来の診療科・医師の確保など一定の資金は必要となります。運転資金とは別に将来の活動資金についても調達の方法を考察する必要があります。すなわち、短期資金調達と長期資金調達の双方について考慮する必要があります。この点は株式会社などの営利法人と同じです。

直接金融と間接金融について

直接金融とは、投資家から医療機関が直接必要となる資金を調達する方法です。
間接金融とは、投資家から医療機関が直接必要となる資金を調達するのではなく、金融機関などに集まった資金を金融機関などが融資する方法です。

それぞれにはメリット・デメリットがあります。個々の事情や必要となる資金額・目的などについて考察して、よりよい方法を選択することがベストです。

直接金融では、不特定多数の投資家から資金を調達することから多額の資金を調達することが可能となります。デメリットとしては、手続きが煩雑となり、調達のためのコストが必要となります。また信用情報・決算内容についても開示する必要があります。これらの書類を準備する事務作業も煩雑といえます。

間接金融では、金融機関などが財務状況・信用情報などを把握していることから適切な資金調達のアドバイスが得られる。デメリットとしては、必ず融資されるとはかぎらない。担保を要求されることになり、無担保(信用)のみでは融資されない。

具体的な資金調達の手法

医療機関(病院・診療所)においては、株式が発行出来ないことから資金調達の手法も限定されます。もっとも、株式・社債以外による資金調達方法は、株式会社などと同様の手法を用いることは可能です。この点においては医療法人・医療機関・株式会社と差異は無いし思われます。

銀行借入
銀行などの金融機関から資金を借入れる方法です。資金調達の方法として真っ先に思い浮かぶ方法でしょう。ただし、銀行が貸してくれる保証はなく、また、金利の支払いも重くなります。信用度が低いとり金利はさらに高くなります。
債務の転換
医療機関においても負債(借入金・未払金)はあります。これを資本に転換(DES)する事が出来れば、有効な債務返済(一種の資金調達)が可能となります。ただし、現行の制度においてはこの手法は用いることは出来ません。
社会医療法人債
社会医療法人においては、広く資金調達を行うことを目的として、社債に類似した社会医療法人債を発行する事が可能です。ただし、社会医療法人にのみ認められる債権です。社会医療法人に移行するには高いハードルがあります。 発行するには、多額の発行手数料が必要となります。格付けなど取得する必要もあり、機動的な資金調達の方法としてはあまり向かないと思われます。
医療機関債
医療機関(病院・診療所)が債権を発行する手法です。直接金融の手段の1つと言えます。債権と言っても医療機関が行う金銭消費貸借契約です。金融機関などからの借入金として性質が強いといえます。全ての医療機関が行えるわけではなく、監査法人などの監査を受けていること・資金の使途が決まっていることなどの制約があります。なお、厚生労働省からガイドラインが出されています。概要としては、過去3年間の経営が黒字であること・1億円以上は監査が必要なことなど条件が細かく設定されています。金利も長期国債を基準として1%上乗せが基本となっています。
診療報酬債権流動化
病院・診療所が有している診療報酬債権を担保として必要な資金を調達する方法です。診療報酬債権は、一定の事由以外は必ず支払われるので信用度としてかなり高いです。この信用を活用して資金を調達します。短期で必要となる資金調達の方法としては優れていると思われます。診療報酬債権流動化については専門ページにて詳細記載しています。 ⇒詳しくはコチラから
シンジケート・ローン
シンジケート・ローンとは、アレンジャーと呼ばれる幹事金融機関が複数の金融機関を取りまとめて、複数の金融機関が必要となる資金を調達してくれる方法です。取りまとめられた複数の金融機関をシンジケート団と呼んでいます。複数の金融機関が少しずつ融資をすることになります。複数の金融機関と同一条件で借り入れを行うことが可能となります。金融機関の側からすると融資額が抑えられるメリットがあります。 もっとも、調達する側(医療機関)は、幹事金融機関(アレンジャー)に対して手数料を支払う必要があります(アレンジメント・フィー)。  
⇒シンジケート・ローンの詳細はコチラから
コミットメント・ライン
コミットメント・ラインとは、金融機関との間であらかじめ融資金額の上限を設定しておくことです。この定められた上限については、いつでも融資を得ることが可能となります。すなわち、事前に融資枠を設定しておきます。この融資枠内であれば、いつでも自由に必要となる資金を調達することが可能となります。だたし、コミットメント・ラインの設定には手数料が発生します。また、融資枠にたいしても手数料が必要となります。融資枠まで借りてなくても融資枠全体についての手数料となります。
⇒コミットメント・ラインの詳細についてはコチラから
リースバック方式
高額な医療機器・事務機器などについては、リースバックの手法を用いることも可能となります。このリースバックの手法は株式会社などでも用いられています。一度、医療機器を購入して、これを売却することで資金を確保できます。毎月、医療機器のリース料(賃借料)を支払うことにより、そのまま使用することが可能となります。デメリットとしては、契約期間中に解約することができないことが挙げられます。医療機関などが有している土地・建物についてもリースバックの手法を用いることも可能と考えられます。
MS法人を用いる
MS法人は、通常の株式会社です。このMS法人を窓口として必要な資金を調達する方法も考えられます。株式や社債を発行することも可能です。他の金融機関などからの融資などを利用するなどの枠組みも利用可能でしょう。MS法人は営利事業を行うことが可能となり、利益を得て、融資するなどの方法も考えられます。
その他の枠組み(スキーム)
金融機関などからの間接金融・債券の発行により調達した資金は利子を付して返還する事が原則です。これ以外の方法で資金調達を行うことも可能です。具体的には個々の医療機関(病院・診療所)において事情が異なるので、一律に決めることは出来ません。医療法人や病院(診療所)の資産を上手く活用した手法(証券化など)を組合わせて用いることになります。

結びにかえて

医療法人・医療機関も会社と同じように、より良い医療サービスを提供するには活動資金が必ず必要となります。ただ、他の営利法人と異なり制約が多いことも事実です。かかる事情の中で、確実に資金調達を行うには、しっかりとした戦略・資金調達の手法を熟知する必要があります。 当事務所は、資金調達の手法について色々な角度から精査して提案致します。医療機関に関する許認可申請と併せたワンストップサービス(一体的サービス)を提供できることが最大の強みです。M&Aと併せて医療法務に力を発揮致します。先ずはお気軽にお問い合わせください。

★当事務所の最大の強みは、単に手続きの代理・代行に留まらないことです。その後に生ずる事項を含めた総合的・一体的な法的サービス・アドバイスが行えることにあります。

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