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病院・診療所開設に伴う不利益

病院・診療所開設においては、構造基準・人員の基準・その他の厚生労働省の定める省令(規則)に該当する必要があります。
これらの医療法・厚生労働省の省令を満たす限り病院・診療所の開設を許可しなければなりません(医療法7条4項)。すなわち、厚生労働大臣・都道府県知事・市長・区長などは開設許可をすることになります。病院・診療所開設を拒否することはできません。
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他方で、医療法においては、地域の医療計画を策定する旨を規定しています。この地域医療計画は、病床(ベッド数)などの地域の医療全般に関する事項を規定することとしています。

また、都道府県知事・市長・区長などは、病院・診療所開設者に対して地域医療計画に基づいて勧告を行うことができるとしています(医療法30条の7)。

この地域医療計画に基づく勧告には強制力はありません。勧告を無視して病院・診療所開設することはできます(医療法7条4項)。だた、この場合に一定の不利益が生じる可能性があります。病院・診療所は開設できたことから、不利益が生じるはずがないと考えることもできます。しかし、病院・診療所を開設できたことと、それからの問題は別です。

▼ 具体的な不利益内容 ▼ 結びにかえて

具体的な不利益内容

病院・診療所を開設することはスタートにすぎません。健康保険の診療に従事するには、厚生労働大臣の登録を受けた医師(保険医)であることが必要です(健康保険法64条)。 この保険医としての登録がなければ、保険の取扱いが認められません。すなわち、患者さんは100%自己負担することになります。

具体的な不利益とは、保険医療機関としての登録の問題です。保険医としての登録が行われない場合は、実質的に病院・診療所開設を行うことはできません。これは医師にとって死活問題となります。

保険医としての登録は、病院・診療所開設者の申請により行います(健康保険法65条1項)。申請があった場合は、厚生労働大臣は保険医して登録を拒否することができます(健康保険法65条3項)。条文の文言上、「医療法の地域医療計画に基づく勧告に従わない場合は登録拒否」と規定していません。

健康保険法の文言は、「著しく不適当と認められるとき」(健康保険法65条3項6号)と規定しています。「医療法の地域医療計画に基づく勧告に従わない」=「著しく不適当」と判断されることになります。

このような観点から、実質的には、医療法に基づく地域医療計画に従わざるを得ないことになります。このような医療法の地域医療計画の勧告に従わないで、病院を開設し保険医療機関(保険医)として登録されなかった事例が裁判で争われました。最高裁は行政機関の処分(保険医として登録拒否)は正当としています(平成17年7月15日)。同じような別の事例でも最高裁は正当と判断しています(平成17年9月8日)

結びにかえて

医療法務に関する分野は、規定が細かく行政当局の許認可の及び範囲がとても広いです。

病床を増やす場合にもしっかりとした事実監査・行政機関に対する事前監査(デューデリジェンス)が必須です。医療法が改正され、医療機関を取り巻く制度が大きく変わりました。今後は、医療機関のM&A(合併・買収)も盛んに行われると思われます。

このM&Aにおいても行政機関の許可が必要となります。医療機関は行政機関と切っても切れません。行政当局の意向・判断をしっかりと見極めることこそ、最高の医療サービスを提供する前提だと確信しています。

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